レコーディングの旅[6]|古典調律の実験?!Bach’s Seals? Vallotti, Young?

ベルリンを発ち、ミュンヘン空港で乗り換えの時間にシュニッツェル(ウィーン風カツレツ)を食べ、誓いのビールを一杯1人でニヤケながら飲んだ。
次に来るのは、レコーディングの時だと。

日本へ着くと、直ぐにチームスタッフと2019年9月のレコーディングに向けて、準備を進めていきました。1年半もあるなと、余裕を見ていましたが、あっという間に過ぎたように思います。
前回のレコーディングでは1回のプリプロ(テストレコーディング)でしたが、今回は2回行いました。

そして、音楽創りの上で試行錯誤した一つは、古典調律です。
少し専門的な話になりましすが、通常は平均律、即ちオクターブを均等に分割されたものを使用します。古典調律は沢山の種類がありますが、簡単に言うと、オクターブは不均等に分割されます。階段の高さが一段一段違うようなイメージです。何故、古典調律である必要があるのか。今回はどうするのか。平均律でいくのか、はたまた、どの音律でいくのか。レコーディング調律師の加藤正人氏と、今までの経験も踏まえ実験と話し合いを繰り返し、3ヵ月前まで悩み・可能性を探りました。

Bach’s Seals 1.0(岡本芳雄氏による)という調律法を採用した   前作『W. A. モーツァルト:ロンド ソナタ』(KCD-2057)に対し、今回私達が辿り着いた選択はヤングⅡ。他の候補にも上がっていたヴァロッティでは、ややもの足りない。ただ、やり過ぎると耐え兼ねなくなります。落とし所を見つけるのです。調性、転調、和音のテンションがどこまで許容するのか、ということでヤングⅡにしてみたら、程よく歪みが音楽にエッセンスを与えてくれました。人間味が出ると言う感じです。今回の狙いの一つとして、古典調律を用いるならば、前作のそれよりも濃度を上げたいというのがありました。ホールの音響特性なども相まって効果は出ていると思いますが、聴き比べなどをしてもらっても面白いかもしれません。また、曲や実際の響きによっては調律法を変えるという、その事も想定した上で、収録予定も考えねばなりません。

そう、この実験がレコーディングの時、果たして吉と出るか凶とでるか、最後は現地に入ったみないとわからないね…という糊代を残して、いよいよ、現地へ向かいます‼︎

続きは、また今度…

2020.6.10

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