レコーディングの旅[5]|ベヒシュタインinベルリン

ノイマルクトへ後ろ髪をひかれながらも、次のリサーチのためベルリンへ。

友人家族の家に滞在。急にも関わらず、笑顔で迎え入れてくれ、再会を喜んだ。

ベルリン到着の翌日は早速、ベヒシュタイン・ベルリン本社へ。ベヒシュタイン・ジャパン社のお蔭で大変スムーズに話は進み、担当者のWillmes氏は初めて会ったアーティストを理解しようと、私に質問を投げかけてくださった。先ずはD-282を5台弾き比べ。若い楽器から弾き鳴らされてきたものまで。もし、ベルリンでレコーディングとなれば、ここから楽器を持ち込むからだ。
用意された楽器で一番奥に置かれたD-282から、離れられなくなった。私が今まで弾いたDの中で、表現の幅が圧倒的に群を抜いていた。楽器に夢中になっていく私をみて、彼が、
「この楽器を気に入ったのですね。この楽器はアーティストにしか弾かせません。多くのピアニストに支持されていますよ。好きなだけ弾いてください。」
結局、2時間この楽器を弾かせてもらった。

もう一台、忘れられない楽器がある。F.リストに貸し出していたベヒシュタインだ。
音に深みがあり、決してパワフルではない。しかし、響きの奥行きは無理なく生まれる。
演奏用ではなく、展示用ではあるが、特別に弾かせてくださった。
作曲家が生きていた証に、自分が触れていることに、気持ちが高揚した。

3日ほどベルリン滞在の間に、レコーディングの名所を二箇所、下見に訪れた。一つはピアノ協奏曲や室内楽なら理想的かもと思った。今回のレコーディングはライツターデルに決定!全てが納得。

この2018年2月のリサーチの旅は、行く先々で、皆さんに手厚い歓迎を受けた。私はやっぱり恵まれている、有難い…と思いながら、日本へ帰国の途に着いた。

続きは、また今度…

2020.6.3.

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