ヤマハC5-A 所有楽器

私が初めてグランドピアノで毎日練習できるようになった、想い出の詰まったピアノです。運ばれてきたときの情景を今でも鮮明に覚えています。自分の楽器が手元に来る喜びは、これが原点になっています。1度オーバーホールをしていますが、長い年月によって、音の立ち上がりはまろやかになっています。ハンマーのフェルトの摩耗によりコツっと弦にストレートに当たる感覚があります。比較的、どなたでも弾きやすい、弾きなれた楽器と言えます。低音から高音に向けて、音の鳴らし方を曲線状に作ると楽器が共鳴しやすくなります。レッスンをしているときに、ベヒシュタインとヤマハを並べ、生徒にはベヒシュタインを私はヤマハを弾くことが多いですが、時には交代をし、其々にどのような表現の可能性があるのかを試すことができます。ペダリングの違い、音創りの違い、魅力の違いなどを。私がヤマハを弾いているときのやり方と全く同じように弾こうとしては、ベヒシュタインは鳴らないし、逆のことも然りです。自主的な意識の変化を2台の異なるピアノを使用することによって、生んでくれます。ピアニストはいつも自分の所有楽器やお気に入りのピアノを持ち運ぶことはモダン・ピアノにおいて、ほとんどできません。コンディションの良い状態のピアノで本番をできるわけではないです。その時に、楽器の特性を拾うことがとても重要であるわけです。できるだけ、様々機種の楽器に触れること、個性のある楽器に触れることが自身のパレットを広げてくれると、長年付き合いのあるこのヤマハが改めて教えてくれました。

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